数あるバスケットボールを扱った漫画の中でも、圧倒的な人気を誇るスラムダンク。
その作中、本来ファンに憎まれてもしょうがないあるキャラクターに、根強いファンがいます。
そのキャラクターとは、三井寿。
2008年、YAHOO!ニュースで行われたキャラクターの人気投票では一位を獲得したほどの人気です。
物語が完結している現在では、スリーポイントシュートの名手としての印象の方が強い彼ですが、登場の仕方はとんでもないものになっています。
三井寿が登場したのは、意外に遅めのコミックスの6巻後半からでした。
生意気なバスケ部員宮城リョータに絡んでくるムカつく3年の不良の一人として登場していました。
更生してからは爽やかな風貌をしていますが、登場時は目つきも悪く、お世辞にも好感が持てる人物としては描かれていません。
しかも三井は、コミックスの7巻と8巻の2巻分暴れまくります。
生意気なリョータに焼きを入れるために、仲間を引き連れてバスケ部の練習中に殴り込みに来るのです。
三井はどうも喫煙もしていなかったようですし、喧嘩の様子を見ている限りでは花道や流川に圧倒されている感があったので、不良になり切れていなかったようにも感じます。
8巻で小暮の告白により、三井はバスケ部員で、中学時代はMVPプレーヤーだったにもかかわらず、足の負傷で挫折して幽霊部員になってしまっていたことが判明します。
意地を張る三井の前に、名言「諦めたらそこで試合終了だよ」という言葉で中学時代の三井を励ましてくれた、彼が最も尊敬する監督、安西先生が登場。
先生の姿を見ただけで、三井は涙を流し、バスケがしたいと本音を吐露します。
三井はバスケ部に復帰しますが、最初に花道が「オレたちは許したわけじゃねーぞ」と言っているように、本来暴力沙汰を起こした部員と、打ち解けて仲間になるというのは大変困難なのでは?と感じた人もいるでしょう。
実際は反省をしても、三井の仲間に殴られた部員はかなり酷い怪我をしているため、許してチームメイトとして三井を受け入れることを、本当に部員全員が承諾していたのかは謎です。
スラムダンクのファンの中には、こんなに都合よく復帰できるものなのかと思った人もいるかもしれません。
しかし、暴力沙汰という罪を犯してでも彼が人を引き付けるのは、彼が不良に転落しても安西先生への尊敬だけは失っていなかったこと、バスケットを愛し続けていた姿勢にあるのかもしれません。
三井は試合を重ねる中、不良だった時期を何度も後悔し、自分の体力のなさに自信を失い、時に倒れるまで、まるで贖罪をするかのようにチームに貢献します。
最後には尊敬する安西先生に「君がいてよかった」とまで言わしめます。
人間生きていると、誰もが人生後悔したり、道を誤ったり、あの時なぜこうしなかったんだろうと思うことが何度もあります。
そういった順風満帆にいかない人生を変えようとする愚直な姿が、ファンを引き付け、三井寿というキャラクターの最高の魅力となっているのです。
人間その気になればやり直せる。そんなメッセージを持つ三井の存在は、ファンに人生の大きな教訓を与えてくれているようにも思えます。